から次へとつながっているのだ。切迫《せっぱく》した尿意と慾情《よくじょう》とかゆみと夢遊《むゆう》と地形とユダヤ横丁の掟《おきて》と動くクレーンと動く箱詰め器械と、これだけのものが長いトンネルのように繋《つな》がっている。トンネルの入口はあの妖酒で、出口はビール箱だ。入口を入ったが最後、箱詰め屍体になるまで逃げることはできないのだ。なんと恐ろしいことではないか」
6
私にもだんだんと辻永の語る恐ろしさが判ってきた。ゾッとする戦慄《せんりつ》が背筋へ忍びよる――。
「この明るい東京の真ン中に、あのバーから始まってビール会社に続くこんな恐ろしい街道《かいどう》があるのだ。それは死に至る街道だ。地獄へゆく街道だ。これでも君は、おれ様の探偵眼を疑《うたが》うか」と辻永は虹《にじ》のような気焔《きえん》を吐《は》いた。
私はすっかり自信がなくなった。顔面《がんめん》は紙のように白くなっていたであろう。手はワナワナと震《ふる》えてきた。
「もう判った。君はミチ子のことで、この僕をあの恐ろしい地獄街道へ送ろうというのだネ。さっき僕に飲ませた酒は、あの妖しい酒なんだろう。そうに違
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