。三人とも夜中にいなくなったので覚えているそうだ。遺留品《いりゅうひん》も出て来た」
「ほほう」
「ところがその青年たちは、申し合わせたように近所の薬屋で、かゆみ止《ど》めの薬を買って身体に塗ったそうだ」
「三人が三人ともかい」
「そうなのだ。三人が三人ともだ。それがこの薬屋でかゆみ止めの薬を買って、身体に塗るしさ。女の話では、なんでもその前は全身かゆがって死ぬように藻《も》がいていたそうだ」
「どうしてそんなにかゆがる客をわざわざ取ったのだ」
「イヤそれは、○かゆい[#「かゆい」に傍点](家につくちょっと前から始まる)――なんで、始めからかゆがっていた訳じゃないのだ」
「じゃどこかで拾ってきた客なのだネ」
「これだ。○ストリート・ガール(銀座で引っぱられる)――つまり銀座から、あの場所まで引張ってゆくうちに、かゆくなったのだ」
「どうして、かゆくなったのだ」
「それは後から話すよ」
 ミチ子がグラスを載《の》せてやってきた。
「オイ煙草を買って来て呉れ。それからシャンパンの盃《さかずき》をあげるから、冷《ひや》して用意しといて呉れ」
 辻永はミチ子に向ってたてつづけに用を云いつけた。
前へ 次へ
全26ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング