。三人とも夜中にいなくなったので覚えているそうだ。遺留品《いりゅうひん》も出て来た」
「ほほう」
「ところがその青年たちは、申し合わせたように近所の薬屋で、かゆみ止《ど》めの薬を買って身体に塗ったそうだ」
「三人が三人ともかい」
「そうなのだ。三人が三人ともだ。それがこの薬屋でかゆみ止めの薬を買って、身体に塗るしさ。女の話では、なんでもその前は全身かゆがって死ぬように藻《も》がいていたそうだ」
「どうしてそんなにかゆがる客をわざわざ取ったのだ」
「イヤそれは、○かゆい[#「かゆい」に傍点](家につくちょっと前から始まる)――なんで、始めからかゆがっていた訳じゃないのだ」
「じゃどこかで拾ってきた客なのだネ」
「これだ。○ストリート・ガール(銀座で引っぱられる)――つまり銀座から、あの場所まで引張ってゆくうちに、かゆくなったのだ」
「どうして、かゆくなったのだ」
「それは後から話すよ」
ミチ子がグラスを載《の》せてやってきた。
「オイ煙草を買って来て呉れ。それからシャンパンの盃《さかずき》をあげるから、冷《ひや》して用意しといて呉れ」
辻永はミチ子に向ってたてつづけに用を云いつけた。
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