まの》には何かうまいカクテルを作ってやれ。僕は珍酒《ちんしゅ》コンコドスを一つ盛り合わせてコンコドス・カクテルとゆくかな」
「コンコドス? およしなさい。アレ飲むとよくないことよ。それに辻永さん、今夜は顔色がたいへん悪いわよ。どうかして?」
 なるほど辻永の顔色のわるいことは前から気がついていた。変に黄色っぽいのである。
「ナーニ、今日は疲れたのと、喜びと一緒に来たせいなんだよ。――早くもって来い」
「じゃ辻永さんはコンコドス。山野さんはクィーン・ノブ・ナイルがよかない」ミチ子が向うへ行ってしまうと、辻永は待ちかねたように、懐中《かいちゅう》から手帖を出した。それには小さい文字で、いくつもの項目《こうもく》わけにして書き並べてあった。
「君。ちょっとこのところを読んで見給え」辻永は鉛筆のお尻で、そこに書き並べられた標題《ひょうだい》を指した。
 そこには次のようなことが書いてあった。
 ――○ガールの家(夜中に客が居なくなってしまったという不思議な事件が三度あったという)
「これは?」と私は訊《たず》ねた。
「さっきの女のうちに、箱詰《はこづめ》になった青年が三人とも泊ったことが判った
前へ 次へ
全26ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング