んで来たのかを考えてみたまえ。あれは少くとも旗田の身体から三メートル以上は離れたところから撃ったものだ。そしてその方向に窓があることを思い出したまえ」
「窓? 窓は閉っていた」
「うん、窓は閉っていた、硝子扉が平仮名のくの字なりになって閉っていた――と芝山は証言している。ということは、硝子窓は、いつになく、よく閉っていなかったんだ。内側のカーテンも細目に開いていたという。だから外から窓を開いてピストルの狙いをつけて撃ったんだとしても、今いった条件にあてはまるわけだ」
「すると……」土居は愕きの目をみはって、
「すると犯人は窓の外からピストルを室内へ向けて撃ったというのかね」
「犯人――かどうか知らんが、引金を引いた主は、窓の外から撃った公算大なりと、僕は認めている。このことは尚明日、はっきりした証拠を現場でつかみたいと思っている。もし時間に余裕があればね」
「そんな大事なことなら、今日のうちに調べて置けばよかったのに」
「なあに、ピストルを何処から撃ったかという問題は、大して重大なことじゃないんだ。だから急いで調べるに及ばない」
「僕は反対だ。それは非常に重大なことと思うがね。窓の内側
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