地獄の使者
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)千鳥《ちどり》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)八雲|千鳥《ちどり》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)いずれ先生には[#「いずれ先生には」に傍点]
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   プロローグ

 その朝、帆村荘六が食事をすませて、廊下づたいに同じ棟にある探偵事務所の居間へ足を踏み入れたとき、彼を待っていたように、机上の電話のベルが鳴った。
 彼は左手の指にはさんでいた紙巻煙草を右手の方へ持ちかえて、受話器をとりあげた。
「ああ、そうです。私は帆村です。……やあ土居君か。どうしたの、一体……分っている、君が事件の中に居るということが……。しかもそれは、新聞記者たる君が仕事の上で補えた事件じゃなくて、君が好まざるにもかかわらずその事件にまきこまれちまったというのだろう。……お喋りはよせって。なるほどねえ。……えッ、君の妹さんが……」
 帆村は、すいかけの煙草を急いで灰皿の中へなげこむと、そのかわりに鉛筆をつかんだ。軸の黄色い鉛筆だった。
「そうかなあ、君に妹さんがあったのか
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