知らないと、頑張りつづけて居ります」
「いえ[#「いえ」はママ]。ピストルなんか知らないとね。なるほど、そうかね。……で、君がその婦人を容疑者とした理由は?」
検事は、警部の顔を興深げに見る。
「はい。それはいくつもの理由がございますが、まず第一に、その婦人は今朝この邸に居たこと。第二に、その婦人の名刺の入っているハンドバグが、被害者のかけている椅子の中にあったこと。これを詳しく申しますると、現に被害者の屍体は、その尻の下にそのハンドバグを敷いて居ります。始め私は椅子の背中越しに中を覗きこんだところ、それを発見したのでありました。第三には、その婦人は昨夜の現場不在証明をすることが出来ないでいるのであります。なお、これからの捜査によってその他の有力なる証拠が集ってくるだろうと思われます」
大寺警部は、いくぶん得意にひびく自分の語調に気がついたか、顔を赧らめた。
「犯人は、この家の外部の者だという確信があるらしいが、それは何か根拠のあることかね」
検事はちょっと皮肉を交ぜていった。
「犯人がこの家の外部の者だと、そこまでは私はいい切っていませんのですが、何分にもハンドバグが屍体の尻の
前へ
次へ
全157ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング