下にあり、そのハンドバグの持主が今朝もこの邸に居わせましたんで、その婦人――土居三津子を有力なる容疑者に選ばないわけには行かなくなりました」
「なるほど。そうすると、土居三津子がどういう手段で旗田を殺害したかという証拠も欲しいわけだが、それは見つかったかね」
「それは、さっきも申しましたが、土居三津子はピストルを持って居りませんので、そのところがまだ十分な証拠固めが出来上っていません」
「ぜひ、そのピストルを早く探しあてたいものだね」といって検事はちょっと言葉を切ってから、誰にいうともなく「犯人は、たしかにわれわれに挑戦をしている。不都合な奴だ。だが、およそ犯罪をするには必然的に動機がある。その動機までを隠すことは出来ないのだ。今に犯人は歎くことであろう」と呟くようにいった。
「その外に何か差当りのご用は……」
と、大寺警部が、遠慮がちに訊いた。と、長谷戸検事は、われに返ったように大きな呼吸をして、警部の方へ振向いた。
「大寺君。この家には、被害者の外にも同居人が居たんだろう」
検事の質問には、言外の意味が籠っているようであった。
それに対して警部は、同じ屋根の下に寝泊しているの
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