、部屋の中が暗いものですからさっき私が開放させたのです。しかし現場見取図や写真などには、ちゃんとカーテンが閉っているところが記録してあります。ただ、そのことをちょっと検事さんにお話することを失念していました。どうか一つ……」
警部は軽く頭を下げた。検事は苦がい顔になって、警部を一瞥した。
「私が来るまでは、現場はすべてそのままにしておいて貰いたいね」
「はあ。失礼しました。しかしカーテンを開かないと取調べにあまり暗かったものでございますから……」
警部は弁解をしながら顔をふくらませている。
「するとあの窓はどうだね。開いていたのか閉っていたのか」
検事は色をなして開いている左の窓を指した。
「私は窓には指一本触れていません。さっきごらんになりました現場見取図にも、あの窓があの通り明いていたことはちゃんと出て居ります」
「図面は見ているが、ちょっと君に確めてみたかっただけのことだ」
その家政婦が、突然きゃっと叫んで、後へ飛びのいた。同時に驚いた検事と警部の鼻さきへ、紐に結えて吊下げられた大きなどぶ鼠がゆっくりと出て来た。帆村荘六が指さきに紐をひっかけて、検事と警部の間へ鼠の死骸を
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