殺されたのは、何者か?
 本邦に珍らしいニッケル鉱の山の持主である旗田鶴彌氏が、その不幸な人物だった。氏の邸は、見附の近くにある。
 帆村は、見附の公衆電話函の前で車を降り、そこに待っていた土居記者と一緒になった。二人は、旗田邸へ足を向けた。
 その道すがら、土居記者は帆村に礼をいったり、懇願したり、訴えたりした。土居のいいたいことが大体終ったとき、帆村はたずねたいことを口に出した。
「そうすると三津子さんは、今朝旗田邸から引かれたというわけだね。三津子さんが今朝旗田邸に居たことについて、あらかじめ、君は知っていたの」
「いいや、知らなかった。僕は昨夜は十二時を廻って帰って来たんだ、昨夜は地方版の記事について面倒なことが起って、遅くまで社に残っていたもんだから。……妹の部屋へ声をかけたところ、妹はたしかに返事をした。もちろん寝ていることが分った。声の聞えた見当からね。そこで僕は安心して、自分の部屋に入って寝床へもぐりこんだのだ。ところが今朝僕が起きてみると、妹が居ないのだ。買物にでも行ったのかと思っていたが、なかなか帰って来ない。そのうちに出社の時間が来た。今朝は昨夜からの記事の一件で
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