たちの一行を乗せた自動車が到着した。佐々は、一行が部屋へ入って来たので、びっくりした。しかし彼はすぐ了解した。そうだ、ここが殺人容疑者の本舞台なんだから、検事一行がここへ移動して来るのはあたり前だと気がついた。
「この通りです。どの缶にも、赤線の符牒がついていますよ。おどろきましたね」
 佐々は、部屋の真中に山のように積みあげた缶詰を指さした。検事は大寺警部に目配せして、それらの缶詰を調べにかかった、指紋をつぶさないように気をつけながら……。
「無いね。無いじゃないか」
 検事は失望していった。
「無いですね。どの缶詰も重いですね。軽いやつは一つもないですね」
 警部も失望の態である。
「空き缶の方はどうだろうか。中が洗ったように綺麗なのがあるかい」
 こんどは空き缶探しにうつった。だがそれも失望を強めたに過ぎなかった。
 問題の空き缶のように中の綺麗な缶は一つもなかった。
「この上は、お末をここへ引張って来て、訊問するんですな」
「うん」
 と検事は考えていたが、
「それは後でもいいと思う。それよりは次のミヤコ缶詰工場へ行こう。あそこへ行けば、問題の空き缶についていた未詳の指紋の主が
前へ 次へ
全157ページ中140ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング