といったのは尤もだった。
「まず先に、私にいわせて貰おう」と検事は言葉を続けた。「瓦斯中毒のために、この家の主人鶴彌と一匹の溝鼠《どぶねずみ》とが同時に心臓麻痺で死んだとする。そういうことは如何なる状況の下に於て在り得べきことか。その毒瓦斯は如何なる種類のもので、どこにどうして保存されてあったか。そしてそれは如何に殺人のために用いられたか。それからその毒瓦斯は鶴彌と鼠一匹を斃《たお》しただけで、他に被害者を生じなかったのはどういうわけか。――まあ、ざっとこれだけのことが明白にせられなければならないと思う。そうじゃないかね、帆村君」
 帆村は聞き終って、かるく肯きながら検事の方へ静かに向き直った。
「正直なことを申すなら、今検事さんが提示された諸件について、僕は一々満足な回答を持ち合わせていません。つまり、これから調べたいと思うことばかりなんです。なにしろ気がついたのが、つい先刻のことだったものですから――ですが、こうなれば僕は、検事さんのお許しを願って、その方向の捜査をしながら一々回答を出して行こうと思うんですが、どうでしょう」
「つまり君は、瓦斯中毒説を立証する捜査を自分に委せよ
前へ 次へ
全157ページ中116ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング