ことができるだろうか」
長谷戸検事は大いに心を動かしながら、しかも立証困難と見て自分の心の動揺を制している。
「それはあんまり突飛すぎる。これまでのわれわれの捜査を根本からひっくりかえすつもりなんですか、君は……」
と、大寺警部は露骨に不愉快さをぶちまけた。
「結果に於てそういうことになるのも已むを得ないですね、もしも僕が今のべた説が真に正しいものであれば……」
「君は、瓦斯中毒説が正しいと思っているのか、それともまだそれほど確信がないのか、どっちなんだい」
「警部さん。僕はほんのすこし前に、瓦斯中毒説をここで主張していいことに気がついたばかりです。これを証拠立てることは、僕としてもこれからの仕事なんです。しかし僕は今後この方面に捜査を続けます。とにかくこの場は、妙な嫌疑をおしつけられそうになった土居三津子氏のために、弁じたことになればいいのです」
三津子に対する訊問は、この際ちょっと脇へ寄せておく外なかった。帆村の言い出した瓦斯中毒説は、真偽いずれにしても多数の論点を抱えこんでいる重大なる問題であったから。だから検事が、
「瓦斯中毒説を、もうすこし深く切開してみようじゃないか」
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