ら下ってまだぶらぶらしていた。下半分は絨氈《じゅうたん》の上に散らばって落ちているようであった。
「ちぇっ、うるせいぞ」
半睡半醒の状態にあったドレゴは如何なるわけにて不思議にもマリヤの額縁が半分に叩き壊されて落ちたのかを探求する慾も起らず、物音のしたわけだけを了解すると安心してそのまま再び寝台の上にぶっ倒れて睡ってしまったのである。
それから二時間ばかり経った。
ドレゴは再び目をさまさなければならなくなった。それは異様な血みどろの悪魔が、彼を包んでしまってその恐ろしさと苦しさにどうしても目をさまさずにいられなかったのである。
「ああ――っ、夢だったのか……」
ドレゴは、完全に目をさまして、寝台の上に半身を起こした。彼は沙漠を旅行した者のように、疲れ切っている自分を発見した。それから下腹が今にも破れそうに膨《ふく》らんでいるのに気がついた。いや、もう一つ、顔の左半面が妙にひきつっている。
彼は手をそこにやってみた。指先にかさかさしたものが触った。何だろうと、手を引いて見ると、それは赤黒い血の固まりであった。彼はびっくりして顔から頭へかけて手で撫《な》でまわした。ぴりりと痛むと
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