えているらしいことを案じて彼の邸まで送って来たのである。そのときはもうドレゴは前後不覚で、彼の体重は完全に水戸の身体に移っていた。時刻は午前二時に近かったろう。夏も過ぎようとする頃で、白夜が次第に夕方と暁方との方へ追いやられ、真夜中の前後四時間ほどは有難い真黒な夜の幕に包まれ、人々に快い休息を与えていた。水戸は邸の中から爺やの出てくる間、その闇の中に友を抱えてひょろひょろしながら、黒く涼しい風を襟元にうけて、蘇《よみがえ》[#底本ルビは「よみが」、7−下段−15]ったような気持ちにひたっていた。
「ああ、これは水戸様……おや、若旦那さまを。これは恐《おそ》れ入《い》り奉《たてまつ》りました」
 ガロ爺やは、恐縮して水戸の腕から重いドレゴの身体を受取った。そのときドレゴは突然頭を獅子舞のようにふりたて、
「いや、何といっても僕はこの目で見て勘定して来たんだ。九百九十匹の悪魔が棲んでやがるんだ。……いやいや、もう一匹いたぞ。ううん違う二匹だ。悪魔め、ちょっと僕が油断している間に、九百九十……九百九十五匹かな、九十四匹かな……ううい」
 後はガロ爺やの背中でむにゃむにゃいっていたが、それもや
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