用することができるように思った。そこで教授は、極秘裡に白亜館《ホワイトハウス》官房を訪問して大統領に面会を求めた。大統領は快く彼に会った。その結果教授の提案は取上げられ、ワーナー博士と会見して更に具体的な話を進めることになった。この日は、実にワーナー博士が水戸のために海底より救い出され、気息奄々《きそくえんえん》たる身体をサンキス号の船上に移したその翌朝のことで、当時サンキス号はアイスランド島のオルタ港へ急航の途中にあり、突然大統領からの暗号電報に接した次第であった。
 ワーナー博士は、困憊の極に達していたが、よくこの教授の説を理解し、教授に会見することと決め、この旨返電した。
 それから後は、サンキス号はオルタへの入港を取止め、そして秘密航海の途についた。またワーナー博士一行の存在もまた秘密に保たれることになったのである。サンキス号はその夜は海上に漂泊し、この翌日の夜になってテームズ河を溯江し、ロンドン港に入った。そこで博士と三名の生残った助手と、それに水戸を交えた四名が上陸した。
 このときワーナー博士は、思う仔細があって、水戸を手放し、アイスランドへ赴かせたのである。そのわけは、
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