そ頭脳を持つ生物は、それが頭脳を使用したときには、その思考に応じて特有な電波を輻射《ふくしゃ》するというのである。これを分りよく説明すると、生物が悲しめばその悲しみの波形を持った電波が出るし、また悦べば、その悦びの波形を持った電波が出るというのである。但しこの電波は、波長が非常に小さい上に微弱であるために、これを受信し検出することは相当むずかしいことであるために、従来発見されることが殆んどなかったのだという。ア教授は、もう十年も前からこの種の研究に手を染めていたが、非常な困難な研究であるので、最初の七年間は全く何の成果もあがらなかった。漸くにしてこの三年間、教授はこれを受信し、それを増幅することに成功したが、しかしその結果はこれまで発表せずに至った。それはその実験方法の検討がまだ十分教授の満足する程度にまで至っていなかったためと、なお多少の補充的実験が残っていたがためである。丁度今から一ケ月程前にそれが一通り完了したので、教授はこれからその研究の整理をして、やがて学界に発表しようと思っていた折柄、こんどの怪人集団事件が起ったのであった。
 教授は、この画期的なる新研究をこんどの事件に利
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