既に水戸がドレゴに語ったところによって朧気ながら輪郭が出ているが、或る容易ならぬ特別の使命を彼に授けたためであった。
ワーナー博士ほか二名は、その夜飛行機で大西洋を越え、紐育《ニューヨーク》に入った、そして博士はアンダーソン教授と会見したのである。その会見によってどんなことが決ったか詳《つまびら》かでないが、それから三週間も経って、突然アンダーソン教授の対策の研究が発表せられたところから考えて、これはその日の昼間に[#「昼間に」は底本では「昼間の」、91−下段−10]相当の発展があったものと思われる。
なお博士の発表によれば、この生理電波――と博士はその頭脳使用によっても生ずる電波をそう名付けている――の利用こそ、かの怪人とわれら地球人類の間の意志疎通を図り得る純粋通信手段だと信ずるというのである。
教授のこの発表は、さきにも述べたように、世界的な反響は大してなかった。ただ専門家の間にはこの説を取上げ、活発な論議を行ったところもある。但し教授の説に敬意と賛意を表する学者たちが、十分の一反対し、或いは疑問を持つ者たちが十分の七興味ありとして、賛否を述べないものが十分の二あった。つま
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