わしたものである。この頃はどうしたものか、さっぱり姿を見せなくなっていた。ドレゴは、見覚えのある奇妙な形をしたグロリア号をなつかしく眺めているうちに、いつの間にか記者へ舞い戻っていた。
「そうだ。あの船長はターナーといったな。一等運転士《チーフメイト》がパイクソン。それから事務長《パーサー》が……事務長が、そうだクレーグ。だんだん思い出すぞ。……二年も姿を見せなかったグロリア号が、なんだって突如入港したんだろう。よし、これからグロリア号を訪問してみよう」
ドレゴはむっくり立上ると、埠頭を海岸通の方へ引返した。
それから十五分ばかりして、ドレゴの乗った小蒸気船が、港内浮標に繋留せられているグロリア号に近づいていった。
舷梯が下ろされていて、その下に二隻ばかりの小汽艇が横づけになっていた。ドレゴはその外側に艇をつけさせ、先着の小汽艇を越えて舷梯の下へとりついた。
舷梯を登ろうとすると、なかから数人の者がどやどやと下りて来た。ドレゴは横にのいて、彼等を通す道をあけた。厚い外套を着て、就中包帯だらけの人物が、その中に交っていた。負傷者らしい。上陸してすぐ病院に入るのであろう。その包帯を
前へ
次へ
全184ページ中142ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング