当局は更に新に調査団を編成し、大西洋海底の秘密の探求に本腰を入れることとなった。因《ちなみ》に、その怪人集団は吾人の想像に絶する巨大なる力を有するものの如く、而《しか》もその性情は頗る危険なるものの如くである。彼等が如何なる国籍の者なるかについては、なお今後の調査に待たなければならないが、その真相の判明したる暁には、全世界に有史以来の一大恐慌が起るおそれがあり、その成行は注目される”
 一体何事が起るのだろう。大西洋の海底に如何なる秘密が隠されているのであろうか。有史以来の一大恐慌とは、どんな程度の恐慌を意味しているのだろうか。――このおどろくべき報道に接した誰もが、そういう疑問と不安とに陥った。そして第二報の発表が速かに行われるよう、放送局や新聞社には引切りなしに要請の電話がかかってきた。
「また、戦争じゃろうか」
「ふん。そうかもしれん。一体何国だろうか。あんなところに海底要塞なんか築いたのは……」
 多くの民衆は、こんな会話を取交わした。彼等の想像は大体この程度を出なかった。
 報道の専門家たちは、さすがに商売柄で、この事件について特別報道隊を編成するなどして、その事件を論じ、そ
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