間だった。
 なぜあいつは、とつぜんこんなところへ姿をあらわしたのか。
 怪物は、電灯を消し、室内をまっ暗にした。その暗がりの中に、めりめりと、板のはがれる音がした。それにつづいて、なんだか知らないが、かちゃかちゃと、金具《かなぐ》のふれあう音がした。ときには、ぱっと火花が一瞬間、室内を明かるくすることがあった。そのとき、ほんの一目であったが、室内のありさまが見られた。
 それは異様な光景だった。かの機械人間が、仏壇の方へ前かがみになって、何かしているのだった。壇の上には青白い人間のようなものが横たわっていた。棺桶は片隅《かたすみ》によせられ、蓋《ふた》があいているようであった。それから小一時間のちのこと、ぱっと電灯がついた。ゆれる電灯の灯影《ほかげ》にうつったものは、世にも奇妙な光景だった。
 頭部に、まっ白な繃帯《ほうたい》をぐるぐる巻つけた人間と、黒光りの巨大な機械人間とがからみあっていた。そして両者は、例の破られた窓のところへ近づいたと思うと身軽《みがる》にそれにとびつき、すばやく外へ出てしまったのであった。あとに残るは、あらされたる仏壇と、死体のなくなって空っぽになった棺桶だ
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