て来たね。早く出ていきたまえ」
 ついに大池が勇《いさま》しく立ちあがって、機械人間のそばへ寄り、しかりつけた。
 すると機械人間は、彼の方へ、樽《たる》のように大きい首をふりむけて、
「このダムの設計は、はなはだまずいね。このへんにちょっと亀裂《きれつ》でもはいろうものなら、ダム全体がたちまちくずれてしまう。あぶない、あぶない」
 と、機械人間は、笛を吹くような気味のわるい声でこのダムの設計のまずいことを指摘《してき》した。
 すると大池が怒った。
「よしてくれ。人間でもない、へんな恰好《かっこう》をした鉄の化物《ばけもの》のくせに、人間さまのやったことにけちをつけるなんて、なまいきだぞ」
「そうだ、そうだ。分かりもしないくせに、なまいきなことをいうな。さあ、出て行け」
 江川も立って来て、機械人間をしかりとばした。
「私なら、こんな設計はしない。ここのところは、こうしなくてはならない」
 機械人間は、机の上から赤鉛筆をとると、壁にはってある設計図の上に赤線をひいて、元《もと》の設計を訂正《ていせい》していった。
「よせ。よけいなおせっかいはよして、早く出て行け。出なけりゃ外へほうり
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