中にいるのは五六人にすぎなかった。平常《へいじょう》は、大した用事もないから大ぜいの人がいる必要はないのであった。
きょうも測定|当直《とうちょく》の古山《ふるやま》氏ほか二人と、巡視《じゅんし》がすんで休憩中《きゅうけいちゅう》の大池《おおいけ》さんと江川《えがわ》さんの五人が、退屈《たいくつ》しきった顔で、時間のたつのを待っていた。そこへ、のっそりとはいって来た異様《いよう》な姿をした人物があった。
それこそ、例の怪《あや》しい機械人間であった。
がっちゃんがっちゃんの足音に、所員たちはすぐ気がついた。ふりかえってみて、相手の異様な姿に一同は胆《きも》をつぶした。
(機械人間みたいだが、どうしてここへひとりではいって来たのかしら)
と、一同はふしぎに思いながら、気味《きみ》のわるさにすぐには声が出なかった。
機械人間は、片手にダイナマイトの箱をぶらさげ室内をぐるぐる見まわしていたが、壁に張りつけてあるダムの断面図《だんめんず》に目をつけると、そばへ寄ってまるで生きている人間の技師のように、しげしげと図面《ずめん》に見いった。
「もしもし。君は、ことわりなしに、ここへはいっ
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