ているんだね」
「だれだ。そういう君は何者だ」
「私だよ。さっきも君が聞いてくれたね。わけのわからない私だよ。この足音を聞いたら、分かるだろう」
 機械人間は、がっちゃんがっちゃんと荒々しく足ぶみをしてみせたが、そのときあいている方の左手をのばしたて、がーんと制御台のパネルを叩《たた》きやぶった。
「うわーッ」
 博士はとびのいて、その場にころぶ。
「こんどはどこへ行こうか。ここはもう興味をひくものがない」
 機械人間は、笑うでもなく怒るでもなく、ひややかにそういって、ひとりずんずんと階段をのぼっていった。
 井上と羽黒の二人は、勇気をふるいおこして、怪しい機械人間のあとを追いかけた。
 怪物は、階段をあがると、例の全壊《ぜんかい》に近い大広間の壁の大穴をくぐって、外にでていった。そしてどんどんと早足になって、山道を下の方へとぶように行ってしまった。
 やがて怪人の姿は、雨あがりの木のまにかくれて見えなくなった。


   巨人《きょじん》ダム


 三角岳《さんかくだけ》をくだっていったところに、有名な巨大なダムがあった。
 このダムは、山峡《さんきょう》につくった人工の池をせきとめ
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