博士の努力も、いまはまったく効果がなかった。
 高度計の針は、ふたたびぐんぐんと廻りはじめた。
 七千、八千、九千、一万、一万五千……
「これはいったいどうしたことだ」
 博士も機械を操縦する手をやめて、しばらく呆然《ぼうぜん》としてしまったのだった。
「それ見たことか。うわあはっは、わっはっは……」
 X号の高笑いが、あてもなくこの成層圏《せいそうけん》を飛びつづける、宇宙航空船の中の人々の耳をおしつぶすようにひびきわたったのであった。


   迷えるロケット


 宇宙航空船は、いま、まるで迷ってしまったように、大空を矢のように走りつづけている。
 高度はすでに、二万メートルをこえた。このままでは、地球の引力圏《いんりょくけん》を脱《だっ》して、月の世界へ飛んで行かないとも保証はできない。
 操縦装置は、いまや全然博士の手におえず、この航空船の行手を知っているものは、ただ超人間X号だけだった。
「だめだ。もうぼくにはどうすることもできない。諸君もいよいよかくごをきめてくれたまえ――」
 博士があきらめたように、目をとじた時である。操縦室の扉をひらいて、山形警部がとびこんで来た。

前へ 次へ
全194ページ中176ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング