「先生、先生、たいへんです。たいへんなことが起りましたよ」
「これ以上、たいへんなことが起こるもんか」
 博士の答えはぶっきらぼうだったが、警部はつかつかと博士のそばに歩みよると、その耳に口をよせて、恐ろしいことばをささやいた。
「先生、X号がこの飛行機の中にしのびこんでいますよ」
「えッ、なんだって、それはほんとうかい。どうしてそんなことが分かった――」
 博士は警部の腕をとらえて、はげしくゆすぶった。
「いま、冷蔵室へ、私のからだを運びこんで出て来たとき、廊下の端《はし》を曲った男があったんです。それがなんと――先生にそっくり、あのX号にちがいないんですよ」
「そしてその男はどこへ行った」
「気がつかないように、あとを追いかけましたが、どこにも見えません。X号の恐ろしさはよく私も知っていますから、一人であぶないことをするよりは、こう思って、先生に報告をしに帰って来たんです」
「そうか。よくやってくれた。それならばまだいくらか望みはあるぞ……」
 博士はしきりに考えこんでいたのだった。
「分かった。きっとそれにちがいない。X号は原子爆弾とウラニウムの原料を持って、この飛行機に乗りこん
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