の運転手を叱りつけた。
「すみません。署長さんが、あまり急げ急げといわれましたし、それにまた、この車が思いがけなくとまりましたので」
「それはそうと、全員|総退却《そうたいきゃく》だ。何をぐずぐずしているんだ」
「ここまで来て、ひっかえすんですか」
功名心《こうみょうしん》に燃えている武装警官隊は、山形警部一人だけに手柄をされてなるものか、署長が臆病風《おくびようかぜ》にとりつかれたら、自分たちだけでも突撃しようという意気ごみであった。
「ばか。命令だから引っかえせ。たった今、山形警部から、短波放送で連絡があった。あと十分もすれば、原子爆弾の爆発がおこって、あの研究所はこっぱみじんに吹っとぶんだ。おまえたちは、原子爆弾の恐ろしさが分からないか」
「えッ、原子爆弾ですか。それではわれわれもまごまごしていると、原子病にかかるわけですね」
「そうだ。そのとおり。さあ、引っかえそう」
その時である。道の三百メートルばかり向こうで、ぱーッと物すごい土煙《つちけむり》があがった。
「さあ、ピカドンだぞ」
検事も、署長も、警官隊も、あわてて道のそばの谷そこへ逃げ込んだ。
「どうも君、へんだよ。
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