乗りこんだ。


   原子爆弾


 まさに、危機一髪という瞬間であった。もしあと五分おくれたら、みんなの命はなかったろう。
 X号の命令で、猛烈な毒ガスが、この階に充満《じゅうまん》されたのだった。
 階上二十四階の、第二機械人間操縦室で、X号はにたにたと、悪魔のような笑いを浮かべていた。
「M53号報告。七階全部に、毒ガスの充満おわりました」
「よし、第一機械人間操縦室へ侵入して、敵の屍体《したい》を確認、収容せよ。敵は七名。機械人間の中にはいっているはずだ」
 さすがに、この時には、X号にも、博士たちがどうして地下十六階を逃げだし、七階を攻撃したか、その方法がわかっていたのである。
 しばらく、ぶきみな沈黙がつづいた。
「M53号報告、M53号報告――」
 ふたたびラウドスピーカーからは、機械人間の声が流れだす。
「どうした。屍体は発見できたか」
「それがだめです。ここにいる機械人間は全部味方のものばかり、人間などはどこにもはいっておりません」
 おどろいたような声であった。X号もまた顔色をかえて、操縦盤の前に立ちあがった。
「おかしいな。あの毒ガスの中をくぐって逃げられるわけ
前へ 次へ
全194ページ中162ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング