て来ている、気つけ用の葡萄酒のことをいった。
「気をうしなっているんだから、活の方がいいよ。気がついたら、こんどは葡萄酒をのませる順番になる。井上君、ちょっと活をいれてごらん。あとの者は、みんなてつだって、この人を起こすんだ」
 四人の少年が、博士の上半身を起こした。すると井上がうしろへまわって、博士の脊骨《せぼね》をかぞえたうえで、急所をどんと突いた。
 だめだった。博士は、あいかわらず、ぐったりしたままだ。
「だめかい」
 と、みんなは心配そうに、井上にたずねた。
「まだ、分からない。もう四五へんくりかえしてみよう」
 井上は、まだ希望をすててはいなかった。えいッ。またもう一つ活をいれた。
 と、うーんと博士はうなった。そしてにわかに大きな呼吸をしはじめた。顔色が、目に見えてよくなった。顔をしかめる。痛みが博士を苦しめているらしい。
「あ、生きかえったらしいぞ」
「さあ、葡萄酒の番だ」
「よし、ぼくが、のませてやる」
 羽黒は、リュックを背中からおろして、さっそく水筒《すいとう》の中に入れている葡萄酒をとりだし、ニュウムのコップについで、博士の口の中へ流しこんだ。
 博士は、ごほん
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