年たちは、目的地である三角岳の頂上まで登って来ようというので、ここまで登って来たわけ。するとこの研究所の建物がひどくこわれているので、それにおどろいて、中へはいったわけであった。
「あ、人がたおれている」
「ええッ」
「あそこだよ。白い実験着を着ている人が、たおれているじゃないか。壁のきわだよ」
「ああ、たおれている」
五人の少年たちは、谷博士を見つけた。そばへかけよってみると、博士は顔面や腕に傷をこしらえ、死んだようになっている。呼びおこしても、意識がない。戸山は、博士の鼻の穴へ手を近づけた。博士はかすかに呼吸をしているようだ。そこで彼は耳を博士の胸におしつけてみた。博士の心臓はたしかに打っている。しかし微弱《びじゃく》である。
「この人は、気をうしなっているんだよ」
戸山は、結論をつけて、みんなに話した。
「じゃあ、活《かつ》をいれてみようか」
井上《いのうえ》少年がいった。彼は、柔道を習っていて、活の入れかたを知っていた。
「それよりも、葡萄酒《ぶどうしゅ》をのませた方がいいんじゃないか」
羽黒《はぐろ》少年は救護係《きゅうごがかり》であったから、自分がリュックの中に持っ
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