お目にかけよう。


   ものいう木


 ふたたび夏休みが来た。
 登山者は一日一日多くなった。
 三角岳の機械都市のことは、ほうぼうにまで鳴りひびいて、学生たちは、今年の夏はぜひそれを見学しようというので、足をこっちへ向ける者が多かった。
 山田《やまだ》君と君川《きみかわ》君という大学生が、やはり三角岳を志《こころざ》して登っていった。
 ところが二人は、あまりふざけちらして歩いていたので、とうとう道を踏みまちがえてしまった。太陽の輝《かがや》いている方向が、どうも自分たちの考えている方角と違っているのだった。あわてて地図をひろげて探したが、地図と現在の位置とが合わない。すっかり心細くなってしまった。太陽もだいぶん下へさがっている。へたをすれば、この山の中に野宿《のじゅく》しなくてはならない。
「困ったねえ、どこへ迷《まよ》いこんだのだろう」
 と、山田君がなげいた。
「もう研究所の塔が見えていいはずなんだが、さっぱり見えやしないよ。いったい、どっちへ行ったら三角岳の研究所へ出られるんだか、どうしたら知れるだろうね」
「さあ、分からないねえ」
 二人が困りきって、ともにしぶい顔
前へ 次へ
全194ページ中113ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング