「先生、先生、たいへんです。たいへんなことが起りましたよ」
「これ以上、たいへんなことが起こるもんか」
博士の答えはぶっきらぼうだったが、警部はつかつかと博士のそばに歩みよると、その耳に口をよせて、恐ろしいことばをささやいた。
「先生、X号がこの飛行機の中にしのびこんでいますよ」
「えッ、なんだって、それはほんとうかい。どうしてそんなことが分かった――」
博士は警部の腕をとらえて、はげしくゆすぶった。
「いま、冷蔵室へ、私のからだを運びこんで出て来たとき、廊下の端《はし》を曲った男があったんです。それがなんと――先生にそっくり、あのX号にちがいないんですよ」
「そしてその男はどこへ行った」
「気がつかないように、あとを追いかけましたが、どこにも見えません。X号の恐ろしさはよく私も知っていますから、一人であぶないことをするよりは、こう思って、先生に報告をしに帰って来たんです」
「そうか。よくやってくれた。それならばまだいくらか望みはあるぞ……」
博士はしきりに考えこんでいたのだった。
「分かった。きっとそれにちがいない。X号は原子爆弾とウラニウムの原料を持って、この飛行機に乗りこんだんだ。それだから、原子爆弾を投下しても、あの程度の爆発しか起こらなかったんだ」
博士はひざを叩《たた》いて叫んだ。
「でも、いつのまにそんな離れわざをやったんでしょう」
戸山少年が、ふしぎそうにたずねた。
「あの放送をしてから、この航空船が飛びだすまでには、五六分の時間があったろう。そのあいだに、きっとX号はこの冒険をやってのけたのだよ」
「それではいったいどうすればよいのです」
「X号を倒して、機械の調子を直し、また地上へ帰りつくのだ。きっとどこかでX号が機械の調子を狂わせているのにちがいないのだから、X号を倒しさえすれば、またこの航空船は、思うとおりに動くようになるよ」
だがそのX号を倒すには、いったいどうすればよいのだろう。あの電臓は火にも水にも電撃《でんげき》にも、どのような刺戟《しげき》にも、たえるはず――それを破壊するには、原子力によるほかはないと、博士もはっきりいっていたではないか。この中で原子爆弾が使えないのは、きまりきったことだ。とすれば、どうしてこの超人間に対抗するのか――
博士はその時とつぜん口をひらいていいだした。
「その壁のボタンを一つ一つおして見て
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