。
「谷博士、谷博士――」
博士の手は、ぶるぶると震《ふる》えていた。
「おまえはだれだ。何者だ――」
「きさまが殺したとばかり思っていたX号だよ。おれの力が分かったか。おれは無限の生命力を持っている。原子爆弾の爆発ぐらいでは、おれのからだはびくともしないぞ」
「それではまだ、おまえは死んでいないのか」
「あたりまえだ。これからきさまにこの復讐《ふくしゅう》をしないうちは、死んだりなどしてたまるものか。おれが全精力をかたむけて作りあげた研究所をこわされ、おれの計画のじゃまをされたうえは、きさまたちは、生かして地上へは帰さないからかくごしろ」
X号は火のように、怒《いか》りくるっていたのである。博士もさすがにあわてていた。
「これはいけない。さっそくどこかへ着陸して、X号の行方をつきとめることにしよう」
博士にもX号の行方は分からなかったのだ。X号の声は、ラジオのマイクロホンから聞こえて来たのだし、あのような原子爆弾の大爆発の中でも、ゆうゆうと生きのびておられるようなX号のことである。どんなことをやりだすか知れない、と人々は考えたのである。
だが高度をさげて、地上へ近づこうとする博士の努力も、いまはまったく効果がなかった。
高度計の針は、ふたたびぐんぐんと廻りはじめた。
七千、八千、九千、一万、一万五千……
「これはいったいどうしたことだ」
博士も機械を操縦する手をやめて、しばらく呆然《ぼうぜん》としてしまったのだった。
「それ見たことか。うわあはっは、わっはっは……」
X号の高笑いが、あてもなくこの成層圏《せいそうけん》を飛びつづける、宇宙航空船の中の人々の耳をおしつぶすようにひびきわたったのであった。
迷えるロケット
宇宙航空船は、いま、まるで迷ってしまったように、大空を矢のように走りつづけている。
高度はすでに、二万メートルをこえた。このままでは、地球の引力圏《いんりょくけん》を脱《だっ》して、月の世界へ飛んで行かないとも保証はできない。
操縦装置は、いまや全然博士の手におえず、この航空船の行手を知っているものは、ただ超人間X号だけだった。
「だめだ。もうぼくにはどうすることもできない。諸君もいよいよかくごをきめてくれたまえ――」
博士があきらめたように、目をとじた時である。操縦室の扉をひらいて、山形警部がとびこんで来た。
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