う。
「この三角岳メトロポリスには、われわれ木のほかに、昆虫《こんちゅう》、鳥、小さい獣《けもの》、石などにも、人間と同じように考えたり、お話をうけたまわったり、ご返事できる者が、たくさんいるのですよ」
「ふしぎだ。それはいったい何のためです」
「生化学の研究が、生命と思考力《しこうりょく》を持った電臓を作りあげることに成功したのです。これによって、あらゆる物品は、生命と思考力を持つことができるのです。谷博士のすばらしい研究です。こうして種あかしをしてしまえば、ふしぎでもなんでもありませんでしょう。ねえ、学生さん」
「ありがとう。では、お別かれします」
 大学生は立ち木に礼をいって、いそいでそこを立ちさった。こんなおそろしい目に出あったのは始めてである。二人は、三角岳研究所の見えるところまで来たけれども、研究所の建物の奇妙《きみょう》な形を見ると、おそろしさが急にこみあげて来て、そっちへ廻って行くのはやめにした。二人は、どんどん山をおりていった。


   地獄《じごく》の光景《こうけい》


 谷博士の評判は、一時大したものだった。それはこの三角岳村が、最新文化都市に生まれかわり、村人の生活が非常によくなったころのことである。
 ところが、その後になって、博士の評判は少しわるい方へ引きかえした。
 それは博士の作るものが、あまり奇抜《きばつ》すぎたためであった。村人にとって、ものをいう木や、いいつけた用事をしてくれる甲虫《かぶとむし》や、知らないうちに告げ口をする雀《すずめ》や、歌をうたうのが上手《じょうず》な柱などは、はじめのうちこそふしぎふしぎと手をうって、ほめたたえたけれども、それから時がたつと、そういうものには、どうしても親しめなかった。いや、親しめないばかりか、気味がわるくてならない。村人たちは、うっかりしたことがいえないのだ。いつどこに、スパイのような木や石や小動物がかくれているか知れないのであった。
 腰掛《こしかけ》に腰をかけて、仲よく二人の人間が話をしていると、その腰掛が、とちゅうで怒《おこ》ってしまって、あッというまに、腰掛は二人をそこへ尻餅《しりもち》をつかせて、どんどん部屋から逃げていってしまうのだった。
 そのかわりべんりなこともあった。さあ、引越《ひっこ》しだと主人が命令をすると、家中の道具が、自分で動きだして、移転先《いてんさき》の家
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