ひょう》を見つけ、その方向へどんどん歩いていらっしゃれば、まちがいなく、三角岳研究所の下へでます。お分かりですか」
「どうもありがとう」
 二人の大学生は、話の途中で、その声がうしろの立ち木の中から聞こえてくるのに気がついた。二人はその前まで行って、木を仰《あお》いで礼のことばをいった。ふしぎなことだった。
「失礼ですが、お嬢さんは、どこにいて、われわれを見ていられるのですか。お嬢さんの声が、この木にとりつけてある高声器《こうせいき》からでて来ることは分かっていますがね」
 と、山田君は、立ち木に話しかけた。彼の考えでは、遠くの場所に、そのお嬢さんが望遠鏡を持って、こっちを見ており、道に迷った人を見つけると、電話のスイッチを入れ、電話装置でわれわれに話しかけるのだと思った。
「私は、ここにいます。あなたが見ていらっしゃる一本の立ち木こそ、私の姿です」
 女の声は、そういった。しかしそんなばかばかしいことを、大学生たちは信じかねた。木が人間の声をだすなんて、おとぎばなしだ。
「ほほほ、私のいうことを、うそだと思っていらっしゃるのね。では、もっとはっきりお分かりになるように、私は動いておみせしますわ。あなたがた、どうぞこちらの方へ、道を引きかえしていらっしゃってください」
 そういう声とともに、その立ち木は枝をぐっと曲げた。それは人間が、腕をさしのばして道を教える恰好《かっこう》と同じに見えた。
「たははは」
「うふふふふ」
 二人の大学生は、その場に腰をぬかしてしまった。彼らは、山の中で、お化《ば》けの木に出あったと思ったからだ。この次は、二人ともこのお化けの木にたべられてしまうだろう。
「ほほほほ」と、お化けの木は、枝をゆるがして葉をさらさらとふるって笑った。
「ここは、三角岳のメトロポリスです。あなたがたは、ここへいらっしゃったら、世界第一の文化都市へ来たとお思いにならないといけません。私たち路傍《ろぼう》の立ち木にも、人間の脳髄と同じような考える器官もあれば、発声の器官もあるのです。これはみんな市長の谷博士がこしらえて、私たちにつけてくだすったのです」
 大学生はおどろいて、引きかえした。立ち木が人と同じような感覚を持っているなんて、そんなことがあっていいだろうか。もっとも谷博士の人工電臓《じんこうでんぞう》のことを知っている者なら、それがうそではないと思うだろ
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