った。耳の加減らしい。
喜助は、更にまた大きく、ハァーと溜息をついた。
太い青竹でこしらえた花筒の表面に眼を近づけて丁寧に調べてみた。もう金屬ソジウムが水分を引いて発熱し、竹筒の青い色がすこし変ってきては居ないかと思ったのであるが、別にまだ異状は認められなかった。
喜助はこの爆発装置の設計に、欠点があったのに気がついた。何故もっと大きい滾《こぼ》れ孔《あな》を作って置いて、筒の外から、こう耳を近づけると、ポトリポトリと上部洞から、下部洞へ水の落ちてゆく音がよく聞えるように作らなかったのであるか。このように孔が小さくては、爆発の刹那まで水滴の落ちる音はしないかも知れない。それでは唐突に爆発することになる。これは気が気でないぞ、と考えると、背筋が急に冷くなって、身体がガタガタと細《こまか》く震えだした。
時計を出してみた。予定の爆発時間までは、もうあと五分しかない。だが五分間あると思って落ちついていることは許されないのだ。すこし位のことは計算の誤差で、後や前になるかも知れないのだ。もう目を閉じて、神に祈りを捧げるのがよい頃合であろうか。
喜助は、口を大きく開いて、苦しそうにハァハ
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