仲々死なぬ彼奴
海野十三

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)大熊《おおくま》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)少年|喜助《きすけ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)わし[#「わし」に傍点]
−−

        一

 大熊《おおくま》老人にとって、凡《およ》そ不思議な存在は、少年|喜助《きすけ》であった。
 喜助君なら、今でも一緒に抱いて寝てやってもよいと思っているのであった。今年|廿二《にじゅうに》歳になって、たいへん大人びてきた喜助君の方でも、抱かれることには大いに賛成であろうと思われる。
 大熊老人といえば、あの人かと誰でもがすぐ思い出すほどの金満家《ミリオネア》[#ルビの「ミリオネア」は底本では「シリオネア」]であった。八十二歳になるというのに、腰一つ曲らず、流石に頭髪だけは霜のように真白になっては居るが、肉付は年増女房を思わせるほど豊満で、いつも赭顔《あからがお》をテラテラさせているという、怖るべき精力老人であった。
 財産は五億円だとも云い、一説にはそれほどは無いが、すくなくとも一億円は越え
次へ
全21ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング