いではないか)これを身体の傍に立てて置き、丁度よい時間に爆発させる。
すこし心配になるのはその爆発の力であるが、無論自分を殺すのには充分であろうが、炸裂力は必要以上に劇しくて、ひょっとすると、この花久の店を粉微塵に吹きとばしてしまうかもしれない。これは叔父叔母に対して申訳のないことである。だがまァいいや、大したことはあるまい。
喜助は、目に見えて、急に元気づいて来たのだった。
四
花久の店には、静かに黄昏《たそがれ》の淡い光が漂っていた。そのうすぐらい土間のうちは、広々と綺麗に片付けられてあったが、その中央とおぼしきあたりに、一台の大きな花筒が立っていた。そしてその花筒のすぐ後に、小さい台を据えて喜助がチョコンと腰を下ろしていた。こちらから見ると、喜助は、なにかしきりに耳を傾けて物音を聞いているらしい様子であった。
「…………」
ポトリとも何とも音はしなかった。
喜助はハァと溜息をついた。
しかし、又耳を筒の方へ近づけた。今度は何か微《かす》かな物音がきこえるらしい。喜助はゴクリと唾を呑みこんだ。そうしたら、今までしていたと思った物音が、パッタリしなくな
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