いではないか)これを身体の傍に立てて置き、丁度よい時間に爆発させる。
 すこし心配になるのはその爆発の力であるが、無論自分を殺すのには充分であろうが、炸裂力は必要以上に劇しくて、ひょっとすると、この花久の店を粉微塵に吹きとばしてしまうかもしれない。これは叔父叔母に対して申訳のないことである。だがまァいいや、大したことはあるまい。
 喜助は、目に見えて、急に元気づいて来たのだった。

        四

 花久の店には、静かに黄昏《たそがれ》の淡い光が漂っていた。そのうすぐらい土間のうちは、広々と綺麗に片付けられてあったが、その中央とおぼしきあたりに、一台の大きな花筒が立っていた。そしてその花筒のすぐ後に、小さい台を据えて喜助がチョコンと腰を下ろしていた。こちらから見ると、喜助は、なにかしきりに耳を傾けて物音を聞いているらしい様子であった。
「…………」
 ポトリとも何とも音はしなかった。
 喜助はハァと溜息をついた。
 しかし、又耳を筒の方へ近づけた。今度は何か微《かす》かな物音がきこえるらしい。喜助はゴクリと唾を呑みこんだ。そうしたら、今までしていたと思った物音が、パッタリしなくな
前へ 次へ
全21ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング