そのころ、室内は、荒波にもまれる小舟のように上下左右に、はげしく揺れ、壁土は、ばらばらと落ちる、窓ガラスは大きな音をたてて壊れる。濛々たるけむりの中に、総監をはじめ一同は、倒れまいとして、互いにしっかと、身体を抱きあっていた。
火山総活動
植松総監は、急に忙しい身の上となった。
なにしろ、思いがけない大地震のため、堅牢を誇っていた警視庁は、無残にも、半壊してしまった。
そういうわけだから、東京全市にわたって、倒壊家屋は数しれず、しかも先年の震災のときと同じように市内七十数カ所から、火災が出た。
警防団は、すぐさま手わけをして、組織的な消防作業をはじめた。市民たちは、すこしばかりの荷物をまとめて、続々と郊外へむけて避難を開始した。
電気は、すぐとまってしまったので、人々は、歩いていくほかはなかった。トラックや自動車はあったけれど、これはすべて、ただちに徴発されて官公用になってしまった。
放送局だけが活躍をして、さまざまのニュースを伝え、市民たちに警告を発した。しかし、市民たちの持っていた受信機は、交流式だったから、放送局は、ただ自分ひとりで忙しそうに活躍しただ
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