けのことで、効果はいっこうあがらなかった。
 そのかわり、自動車に、電池式の受信機と高声器をつんだ移動ラジオが、すこぶる活躍をして、避難民や、火事場で活動している市民たちへ、ニュースを送った。
 そのニュースの中に、市民たちの予想もしなかったものがまじっていた。
「――このたびの地震は、全国的であります。震源は、一カ所ではなく、同時に十数カ所にのぼるものと思われます。北の方から申し上げますと、まず帯広付近、青森県においては……」
 というわけで、地震は、まことにめずらしい話だが、全国的に、ほとんど同時に起ったのであった。
 そんな奇妙なことがあっていいだろうか。従来、震源地は一カ所にきまっていたようなものである。別のニュースは、それについて、一つの解説を与えていた。
「――中央気象台の発表によりますと、このたびの驚異的大地震は、わが国の七つの火山帯の総活動によるものでありまして、従来五十四を数えられた活火山は、いずれも一せいに噴火が増大しました。また従来百十一を数えられた休火山のうち、その三分の二に相当する七十四が、このたびあらためて噴火を始めました。中でも、富士火山帯の活動はものすご
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