氷河期の徴候だというのだった。
総監は、博士の言葉が、いっこう腑におちなかった。彼は、いっしょに連れ立ってきた四人の権威者の方をふりむいた。
ところが、その四人の権威者は、いずれも眉をひそめて、博士には知れないように、かすかに首を左右にふった。
(博士のいうことは、信頼できませんよ)
(やっぱり、精神病者ですよ)
総監に対して、このように報告しているようであった。
総監は、あらためて博士の方に向きかえり、
「博士。私は素人ですから、結局、博士のお話がわからないのだとは思いますが、地震や噴火がはげしくなれば、気温は、いよいよ上昇するのではありませんか。むかし、関東地方に大地震がありました年も、十一月ごろまで、初夏のような温暖な気候がつづいたことを憶えております」
と、突っ込んだ。すると博士は、
「あの大地震と、今度の大地震とは、まったく程度もちがえば、性質もちがう。今度の大地震は、地球の周期的大爆発だから、地震は、地球全面に起り、噴火も日本だけではなく、殆ど全世界に起る。そういう大噴火の次に来るものは――」
といいかけて、そのとき博士は、なぜか口をつぐんだ。総監は、やきもきし
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