でに大砲が鳴り、爆音が響いているというお話だが、それは、具体的にいうと、どんなものでしょうか。どこかの地方が、急に気温が下がりだしたという報告でもあるのでございましょうか」
総監は、熱心を面にあらわして、博士に迫っていった。博士は、それをきくと、大きくうなずき、
「氷河期の徴候は、もうだいぶ現われはじめている。第一は、このごろの、へんに熱くるしい気温のことだ。冬だというのに、まるで四、五月ごろの気温ではないか。それに近頃、東京地方では、地震が頻発しているが、これもその前徴の一つである」
「気温が高いということは、氷河期とは、ぜんぜん反対の現象のように思いますが、いかがですか。こう暖かければ、なかなか氷河期なぞ来ないだろうと思われます」
「それは素人考えだよ。今に見ていなさい。大きな地震がやってくる。一度や二度ではない。記録にもないほどの大地震が頻発するのだ。それから、火山が活動をはじめるだろう。それも記録破りの大活動をな。それは、もう間もなく起るだろう。そのときは、わしのいった言葉を思い出すがいい」
やがて、頻々と大地震が来る。そして火山が活動をはじめる。――博士は、それがいよいよ
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