るんだと思う者がいます。わからなくとも、いちおう、なぜ氷河期が来るのかということについて、説明されるのが、お身のためでしょうと思います」
総監は、あくまで、ものやわらかだ。
博士は、顔を真赤にして、すこぶる憤激の態であった。
「総監、あなたは、こういうことを考えてみるがいい。国と国との間に戦争が起ったとする。両国の軍隊は、今さかんに大砲を打ち合い、互いに爆撃をくりかえしている。そのさいちゅうに、軍人が、これはいったい、なぜ戦争になったのかしらん、その筋道は如何、と、そんなことを考え込んでいて、いいものだろうか。戦争は、すでに始まっているのだ。軍人は、ただちに部署について、敵襲に備え、または果敢に攻撃に出なければならない。――それと同じで、氷河期は刻一刻、近づきつつある。すでに大砲は鳴り、爆音は響いている。それになんぞや、科学を理解する力もなくて、科学を検討しようというのは、何という愚かなことだ。科学のことは科学者にまかせ、あなたがた、科学のだす結論を信じて、処置をすればいいのだ。そうではないか」
総監は、当惑顔であった。
「しからば、博士にうかがいますが、氷河期が来るについて、す
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