「しかし博士、私たちは、そう簡単に、結論だけを信じかねます。なにか、もっとほかに、氷河期の来るという証拠を目にし耳にしないと、信じられないのです」
総監は、ここぞと、博士にくいさがった。
ついに大地震う
「そんなことは、いってもむだだ。考えることもむだだ」
老博士は、つよく首を左右にふった。
「むだなことはありません。いや、むしろ、それとは反対に、必要なことです。博士、世間では、博士のことを、氷河狂と申していますぞ。氷河期が来るから、さあ皆、その用意をしろと、博士は叫びまわっておられる。博士は、親切にそういっているのに、世間では、信じない。それは、博士がなぜ氷河期が来るか、その筋道をはっきりおさせにならないから、そんなことになるのです。おわかりでしょうね」
「ご意見はいちおう忝けないが、それはやはりむだである。世間の大衆には、わしの話はむずかしすぎて、これを説く力がないのだ。いや大衆だけではない。おそらく現存の科学者の中でも、果してそのうちの何人が、わしの説明を了解するであろうか。結局それは無駄だよ」
「博士が、そうおっしゃると、中には、博士は嘘をついて脅かしてい
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