なものだ。人類は、自分たちのもっている知力を過信している。まだまだ今の人知力では、天災を喰い止めるだけにいたっていない。そうではないか。火山の爆発の予知さえできていない。台風の通路を計算する力さえない。冷害の年がくることを予報する力さえない。天気予報が、このごろになって、やっと大分あたるようになったくらいだ。自然の大きな力に刃向う人知の大きさは、人間に手向う蟻の力よりもはるかに小さい。いったい、このごろの人間は、自惚れすぎているよ。この大宇宙の中で、人間はいっとう知力の発達した生物だとひとりぎめをしているのだからなあ」
老博士は、銀色の髯の間から、しきりに泡をとばし、腕を高くふりあげつつ、まくしたてた。
「博士が氷河期が来るとおきめになったのは、どういう根拠によるのですか」
総監は、あいかわらず、冷静な態度をつづけた。
「ああ、そのことじゃが……」
と、老博士は、溜息をついて、
「そのことは、なかなかむずかしい学問になるから、君たちにいっても、ますます信ぜられなくなるばかりだ。だから、君たちは、わしのいうとおり、氷河期が来るという結論を信じて、さっそく防衛手段に急ぐのがよろしい」
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