。氷河期が来ることは、もはや疑いのないことだ。われわれは早速、これに対する防衛手段を講じなくてはならない」
 老博士は、怒ったようにいう。
「氷河期が来ると、いったい、どういうことになるのでしょうか。われわれ素人に、よくわかるように話していただきましょう」
 総監は、あくまで下から出る。
「氷河期が来ると、どんなことになるか。そんなことは、わしに聞くまでもない。要するに、地球の大部分――いや、今度やって来る第五氷河期は、おそらく地球全体を蔽いつくしてしまうだろう。このままでいけば、地球のあらゆる生物は死滅し、あらゆる文化が壊滅し、軍備も経済も産業も、すべてめちゃくちゃになる。たとえ幸運に推移して、いくらかの人間が生残ったとしても、人類の勢力は、約二万年昔に後退するであろう。なんという恐ろしいことではないか」
「もし、博士のいわれるとおりの事態が来たとすると、これはたいへんですね」
「それが来ることには、まちがいないのだ。わしが、これほどはっきりいってやるのに、君たちは、まだそれを信じないのか」
「そういうわけでもないのですが、しかし、あまりとっぴな話ですからね」
「天災は、すべてとっぴ
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