なった。連日、ひどい吹雪がつづいた。見る見るうちに、雪はうず高く積っていった。道路も人家の屋根も、雪の下に埋没してしまった。
 それでも、人々はまだ、それほど事態を重大視してはいなかった。その証拠に、まったく雪に埋もれてしまった大東京の上を、スキーヤーたちが、これこそ天の恵みとばかりに、滑りまわったのだ。
 雪は、ますます降った。太陽は、どこかへいってしまった。食糧難がやってきた。燃料は、あと一カ月をかろうじて支えるほどに少くなった。
 十一月から十二月となった。雪は融けなかった。ようやく冬に入ったばかりであるのに、大東京の積雪は五メートルに達した。諸所で、家屋が倒壊した。雪の重味が、いよいよ屋根のうえから加わったのであった。人々は争って、鉄筋コンクリート建の小学校やビルの中へ殺到した。
 食糧と燃料の不足が、いちだんと激しくなった。それまでは、辛うじて送電をつづけていた発電所も、ついに休電のほかなくなった。水力電気は、もうとっくの昔から停まっているが、今まで送電をつづけてきた火力電気も、いよいよ貯蔵の石炭がつきてしまったのであった。全市はついに暗黒と化した。
 こういう状況は、ひとり
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