つもりでしょう」
「だって、アメリカだよ、その避難坑は」
「なあに、飛行機で飛べば、たった一日で太平洋を越えて行けます。博士を信じていいのではないでしょうか」
 多島警視は、総監の質問に対し、いちいち明快な答を与えたので、総監はたいへん満足の様子であった。そこで警視は、たずねた。
「閣下。それでは、北見老博士の依頼してきたことをご承諾になりますか」
 すると総監は、しばらく目を瞑《と》じて、黙っていたが、やがてしずかに口をひらいた。
「吾輩は、そのような事業の表面に立つことを許されていない。たとえその筋に持ち出したとしても、なかなか通るまい。通ったとしてもずいぶん日数もかかれば、たくさんの反対にも遭い、金額も削減されるだろう。それでは、この緊急の事態に備えることはできない」
「では、老博士のせっかくの計画も、ほんの一部しか達せられないわけですね」
 警視は、失望の色をありありと見せていった。そのとき総監は、警視の手を、ぐっと握りしめ、
「吾輩は、表面に立てないが、君は、一身を犠牲にする覚悟なら、やってやれないことはあるまい。おい、多島。吾輩は、君に、ある有力な財閥人を紹介する。そして志
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