くした鉱山のことです。博士が買ったところは、いずれも非常に深く掘り下げてあるところだそうです。それから博士は、しきりに罐詰を買いあつめています。アメリカには、この前の大戦のとき、全体主義国側に渡すまいとして、要《い》りもしないのに百五十億ドルもの罐詰を買って持っているんです。これが今日、二束三文で買えるのです。博士は、それを買って、どんどん廃坑の中へしまいこんでいます」
「ほう。それは愕いた」
「博士は、廃坑の底にエンジンを持ちこんで、地底で発電しようと計画しています。それから薬品を買い込んだり、書籍を集めたり、大童で働いているそうです」
「アメリカ人は、博士の計画を知っているのだろうか。つまり、博士が、氷河期の用意をしているのだということを」
「いや、博士は、それに関しては一語も語っていないようです」
「今までの費用は、どこから出ているのか」
「博士の舎弟が、カルフォルニアに大きな農園を経営していますが、その舎弟から、二百万ドルの融通をうけたそうです」
「博士は、アメリカ人をすくうためにやっているのだろうか」
「それはよくわかりませんが、女史の持ってきた手紙を信用すれば、日本人を救う
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