いてでございます。あの震災の日老博士から聞いた話が、非常に私を刺戟しました。多分、老博士の頭脳が変調を来たしているのだとは思いましたが、それにしても、万一老博士のいうことが本当であったら、どうであろうか。われわれは、博士が狂人だと思いちがいをしていたために、もし氷河期がやって来たとき、われわれは呆然として手の下しようもないというのでは、申し訳ないと思い……」
「よしよし、そのへんはよく分る。で、君は、吾輩に秘密裡に、どんなことをやったというのか」
「北見老博士の跡を、優秀なる二人の刑事に追わしめました」
「博士は、どうしているのか」
多島警視は、総監のその問には、わざと答えず、
「二人の刑事は、ただいま、アメリカにおります」
「なに、アメリカに……。すると、北見老博士も、アメリカにいるとでもいうのか」
総監も、さすがに愕いた様子だ。
多島警視は、大きくうなずき、
「北見氷子女史の話は、わが二人の刑事の報告と、完全に合っています」
「博士は、アメリカで何をしているのかね」
「廃坑を五カ所、買いました」
「廃坑とは、役に立たなくなった鉱山のことかね」
「そうです。すっかり鉱石を掘りつ
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