であるといって、さし出した。
 総監がうけとってみると、それは全部片カナで書いてある電文であった。その大意は、
「総監閣下よ。余は、最近の地球異変が、いよいよ近く第五氷河期の招来を予告するものなるを信ずる次第なり。仍《よ》りて余は、わが日本民族の一部を救済せんとの目的をもって、ひそかにその事業を進行中なり。されども資金枯渇のため、思うにまかせず。あと一万人の日本人を収容する資金として、金二千万円を至急愚娘氷子にまで交付されたし。なお、その他のことにつきては、絶対に質問したまうことなかれ。北見生」
 というのであった。
 総監は、この文面を読んで、愕き、かつ呆れた。二千万円の無心状であった。一万人の日本人を救うというのは結構だとしても、その使い方もわからないのに、二千万円を支出するのはちょっと不可能なことである。総監は、北見博士の使者だという婦人に対し、即座に断ろうかとも考えたが、いやとにかくこういう重大時期に際し、自分一存で事を行うは危いと考え、氷子女史に向う五日間の猶予を乞うたのであった。そうしておいて、総監は、今日、四人の権威者に、また一堂に集まってもらったのである。
「まあ、こう
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